劇場版 空の境界 第一章 俯瞰風景

「実は式って、女の子なんだ……」
「見りゃわかるよ」
「実は俺、8月中ずっと寝てたんだ……」
「見りゃわかるっての」
というわけで、個人的には俯瞰風景は根本的なところで映像化には
向いてなかったのではないか、と思わないこともないのですが……


両儀式坂本真綾
黒桐幹也鈴村健一
蒼崎橙子本田貴子
黒桐鮮花藤村歩
巫条霧絵:田中理恵
と、声優は結構豪華。
橙子さん役の本田貴子さんは聞き覚えの無い名前だったので調べてみたところ、
洋画の吹き替えで活躍してる方のようです。ミラ・ジョヴォヴィッチとか。
アニメだと地獄少女の骨女とか。
……そういやふじのん地獄少女じゃねーかw 能登かわいいよ能登
しかし……残りの主要メンバーの並びは何かトラウマをえぐるようなデジャヴが……
白純里緒保志総一朗(今回出てないけど)
……いやあああああああああああああああああああああああああ!
あなたのトラウマにストライクフリーダムよぉぉぉぉぉ!?
まあ、そういう問題を除けば豪華な顔ぶれと言って良いのではないでしょうか。
演技力に不足を感じることはありませんでした。


で、内容の方は……ほんと、評価するの難しいんですけどね。
今後のつながりは考えず、単品としてだけ評価するなら、説明不足という
評価は避けがたいと思われます。原作知らない人が見るような作品じゃないから、
そんな心配必要無いだろ、と言うのも事実だし、限られた時間の中、
そういう切捨ては決して否定されるだけの要素でもないのですが。
だいたい、原作からして充分に説明されているわけでも無いですしね。


むしろ個人的に気になるのは、冒頭でもネタにしているように、原作で用いられている
トリックが生かせていないという問題です。元々、動画では使いにくいネタだとは思いますが。
式が女の子なんていうのは絵でみれば一発でわかる事でしてねえ。
幹也の方は「眠り続けている」事を前面に押し出し、構成順の変更も含めて
サスペンス性を高める方向に処理した、と見れば良いのでしょうか。
前述の通り、見てる方の99.9%は既にトリックもオチもわかっているわけで、
下手に挑戦的な仕掛けを施すより良いのかもしれませんが、
原作のミステリーとしての核となっている部分をスポイルしている点では残念です。


また、原作にはなかった式と霧絵の一度目の対決という要素を入れた事についてですが、
・初対決で圧倒的だった霧絵の力が何故二度目ではほとんど効かなくなっているのか
(厳密にいえば、何故初対決の時、あれほど効果を及ぼしたのか)
・二度目の対決前の式の黄色いレインコートはファンサービスにしても無意味過ぎでは?
(せめて雨降らせろよ……)
という二点は好意的には捉えられない部分です。
ドラマの構成として一度目の対決で破れ、二度目の雪辱戦というのは基本的なものなのですが、
「生を実感出来ない式に対して、霧絵の暗示は通用しない」という大前提を崩してしまっているのは失敗だと思います。
一戦目は精神的な不安定さ故に苦戦した、という見方が出来なくもないですが、
二戦目時にその問題が解決されているわけでも無いのがネックか。
また、一戦目の霧絵の能力は暗示というよりもサイコキネシスのようにも見えるのも気になるところ。


他、まとめきろうとすると時間がかかりそうなのでグダグダと。
霧絵と橙子さんの会話の中で、式との出会いを語らせた所なんかは良い補足だと思います。
幹也の目覚めの前、霧絵が飛び降りるシーンとの間には蜻蛉と蝶のシーンを
もう一度入れておいても良かった気がします。
OPなんですよね。あれ。
ちょっと時間が離れすぎてて、その後の幹也の「不思議な夢を見たよ」のセリフが力を失っている気がします。
原作……というか本だとすぐに読み返せるから問題は少ないですし、
DVDでもまあすぐに見返せるといえば見返せるんですが、劇場で見る分に
「OPでそのシーンあっただろ?」「あれ?そうだっけ?」となるのは
少々不親切……というか勿体無い気がしないでもありません。