墨攻

10万の敵にたった1人で挑む。
アンディ・ラウがドレス・イベイジョンを使って矢の雨の中を駆け抜け、
アンキャニー・ドッジ、バーニング・スピリッツ、ダブルブレイクを持って
大軍と渡り合い、メテオストライクで敵を壊滅する……
周星馳監督・主演だったらそんなんになってたかもしれませんが、
もちろんこれはそんな話ではありません。


ただ1人、梁を救うため梁城に赴いた墨者・革離。
敵は外に趙軍10万、内には彼を信頼出来ぬ暗愚な王とその取り巻きたち。
熾烈な戦いが今、幕を開ける……
ぶっちゃけ言ってしまえば、こんな感じのコピーから想像出来る内容を
超える作品ではありませんでしたが……


一番の見所はやはり弓矢、槍、剣な時代の攻城戦。
まあ、一瞬でHP回復出来るポーションや、魔法が無ければ、
弓で足射抜かれただけでも戦力としては無効化されるのが現実であり、
作品中でも人はポコポコと死んでいきます。
個人的には残念な事に、この作品では知者、軍師としての革離の働きを
具体的に描写している部分はあまり多くなかったように感じました。
幾つか策略(というか罠)は登場するのですが、
それを仕掛ける場面は無く、その場面になったらポンと登場するものがほとんどで、
伏線(というほどのものでは無いが)があったのは、火矢による延焼を防ぐために
牛の糞尿を民家の屋根に塗らせた場面くらい。
矢に細工をして飛距離を延ばすというエピソードも説明不足で、
何で飛距離が延びたのかいまいちわからない。
戦争に向けての訓練や戦術の指導風景も特に描かれない。
革離を英雄的に描き過ぎないようにするため、
敢えて描かなかったのかも知れませんが、単純に戦争部分での
面白さを求める向きには不興を囲いそうです。


前述していますが、この映画では革離を前面的な英雄としては描いていません。
墨家の考えを否定するような場面も存在します。
そして、ラストも決してハッピーエンドと言えるものではありませんでした。
この映画は、戦国時代に隆盛し、始皇帝による統一後、僅かな間に
滅び去った墨家思想に対するエレジーとして見るのが正しいのかもしれません。